我が心の大正浪漫

明治維新以降の日本は、古代から紡ぐ本当の日本人の意思とは違った歩みをしている様に想えてなりません。穏やかな風土と 天に通じる唯一の言語 日本語を持しながら、自らの良さを感じ取れない このもどかしさを、何とかしなければと想います。珠玉の武士道が 明治維新により一度は破壊され掛けた時に、この国に天使たちが舞い降りて来てくれました。天使たちは文学に勤しみ 芸術を愛し 教養を身に付け、その精神性を極限まで高め、大東亜戦争で散 って行きました。そして彼ら亡き後、日本は 今日の悲しき姿となっております。本当の日本を。

もう直ぐ六十の僕から五十八歳の君へ贈る 或る物語り

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よっちゃん 今頃何してるかな

そう言えば もう五十八歳だっけね

 

ひと口に想い出なんて言うけれど

そんなに単純なものじゃないんだよ

 

あの頃 僕は…

たった一人の兄ちゃんを

突然に亡くしたばかりだったし

 

その後 僕のところに兄弟は

終ぞ来てくれず終いだったけどね

 

母ちゃんはつわりが酷かったから

ぼくを産んでくれただけで

自分としては精一杯だったらしいんだ

 

だから母ちゃんには本当に

感謝しているんだ…

 

よっちゃんも

弟のしょうじ君が生まれて来てくれる

未だずっと前だったからね

 

僕はね よっちゃん

近所のあんちゃん達とも

とても仲が良くて

 

あんちゃん達は 僕のことを

それは本当に可愛がってくれたんだ

 

だから あんちゃん達が

誘いに来てくれた時には何時も

 

正直とても迷ったんだ…

 

でもね 本当のこと言うと

三回に一回ぐらいは断っていたんだ

 

よっちゃんは未だ小さくて

皆んなと外では遊べなかったから

 

僕と一緒に よく絵を描いていたよね

 

 

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僕が描いている時には何時も

そばで じっと見ていてくれた

 

身を乗り出したりも していたよね

 

そんな君は とても可愛かったんだ

 

紙はと言えば…

確か広告の裏を使ったりとか

それに そう わら半紙だったんだ

 

僕らの家はお互い

それほど裕福では無かったからね

 

それに よっちゃんは

僕の描いた絵を何故か…

大事にしまっていてくれたよね

 

始めの頃 僕は

とても びっくりしていたんだ

 

どうして僕の描いた絵を

そんなに大切にしてくれるのかって

 

何時も宝物の様に扱ってくれた…

 

でもね 僕にとっても

掛け替えのない素敵な宝物があるんだ

 

それはね よっちゃんが何時も

僕の描いた絵をしまっていてくれた

その時の…

 

よっちゃんと僕の

互いを大切にすると言う想いなんだよ…

 

その頃の僕たちのことは

今でも よく覚えているよ

 

僕はもう四つだったからね

 

でも君は未だ未だ小さかったから

覚えているだろうか…

 

だからその話を今 君にしてあげるよ…

 

 

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僕は元々 絵が大好きで

 

大人になったなら

感動的な絵描きになりたかったんだ

 

一番好きな画家はミレーだったよ

「 晩鐘 」には とても焦がれた… 

 

今よりも小さな三歳の時から

 

広告の裏とか…

余り好きでは無かったけど新聞紙に

 

鉛筆で絵を描いて遊んでいたんだ

 

 

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よっちゃんが二歳になって

やっと遊べる様になった頃

 

僕も四歳になって

近所のあんちゃん達が

頻繁に誘いに来てくれてたんだ

 

僕は嬉しくて ついつい

遊びについて行ってしまうんだ

 

そんな時 小さな君は

未だ外には遊びに行けないので

家で静かに過ごしていたんだ

 

覚えているかい…

 

僕はあんちゃん達と遊ぶことが

それは大好きだったけど…

 

僕が絵を描いてあげると

君は満面の笑みで

何時もとても喜んでくれたんだ

 

勿論 あんちゃん達とでは無く

自分とだけ遊んでくれることが

何よりも嬉しかった様なんだ

 

 

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僕はよっちゃんと同い年の二歳の時

二人兄弟の兄ちゃんを亡くしていたし

素直な君が可愛くて仕方がなかった

 

勿論 僕たちは

本当の兄弟の様に過ごしていた

 

君と遊んでいると

僕が描いた絵を大切にしてくれるので

とても自信がついたんだ…

 

僕たちは小学校までは

ずっとその延長だったんだ

 

でも何時までもそんな訳には

行くはずも無くてね…

 

中学や高校の頃はと言えば

そう 皆んなが普通に経験をする

ごく在り来たりな流れだったけどね

 

今はそれぞれの人生があり生活があり

会いたいと想う気持ちばかりで 

何時も そのままに…

 

 

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先日 君の母ちゃんが

回覧板を持って来てくれたんだ

 

たわいも無い話の中で

 「 うちの よしいちは

今でも とっちゃんのこと

よく想い出してるよ  可笑しいない 」

 

そう言いつつ 大笑いをしながら

ほっこり帰って行った…

 

 

全然可笑しくないんだ

よっちゃん…

 

僕も時々想い出してるよ

 

君にとっての故郷は何処かな

 

何気に想うんだ…

 

故郷って言うものは

自分の心の中にあるんだってね

 

だからこそ色褪せること無く…

 

忘れ掛け 朧に霞んだものは

ややもすれば より鮮明なものとなって

 

皆んなの心の内に

生き続けるんじゃないのかな…

 

今度また 一緒に

何かやろうよ よっちゃん…

 

 

                  君と僕の昭和浪漫紀行 より…

 

                

 

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